第7章:きっと誰もが嘘を吐く

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第7章:きっと誰もが嘘を吐く

 その名目は、人々の関心を集めるのにうってつけだ。そして、その子が魔王を倒して用済みになれば、『魔の血を引く邪悪な魔女』として排斥するだろう。そこまで考えるのは最早至極簡単だった。  膝の上に置いた拳をぐっと握り締め、唇を噛む。  悔しい、悲しい。悲劇の後に悠長に現れたかと思えば、大切なものを片端から奪い、そしてこの先尚、シズナの全てを奪い尽くすつもりなのか。ヘルトムート王の覇気の無い顔が、ヘステ妃の底意地の悪さに満ちた笑みが、王宮の人間の嘲笑が、脳裏を横切る。  彼らの思い通りになどなりたくはない。その為には、自力で魔王城に辿り着き、アルダを問いただして、どんな結果になれど、生きて王都に帰って、どうだという顔であの老王の前に立ち、堂々と聖剣を返上して自分にはもう関係無いと王国を去れば良い。  シズナの碧の瞳に、決意の炎が灯ったのを、エルヴェも同じ色の瞳でみとめたのだろう。ひとつ大きく息をついた後に、諦め気味に唇を歪める。 「これは俺も腹をくくるべきだな。魔王城の在り処をお前に伝える時だと」
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