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第7章:きっと誰もが嘘を吐く
どくん、と心臓が脈打つ。そうだ、先代勇者ならば魔王の居城を知っている。アルダのもとへ大きく近づけるのだ。逸る心臓におさまれと念じながら、エルヴェの顔を見つめて、彼の言葉の続きを待った時。
突然、エルヴェが吃驚を顔いっぱいに浮かべて腰を浮かせた。
「シズナ!」
ミサクの焦りきった声が耳に刺さって、振り返ったシズナの視界で、振りかざされた短剣がぎらりと剣呑な光を帯びて、やけにまぶしく見える。振り下ろされるそれを避ける猶予は無い。驚きに目を見開いて固まってしまうシズナの前に、大きな背中が割って入り、肉の裂ける音と、「ぐふっ」と低い苦悶の呻きが聴こえた。
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