第7章:きっと誰もが嘘を吐く

1/1
前へ
/238ページ
次へ

第7章:きっと誰もが嘘を吐く

 その時、そっとシズナの肩を後ろから抱く感覚があった。肩にもたれかかる銀髪が視界の端に映った事で、誰であるかを悟る。その腕も、細かく震えているのを感じ取った時、シズナの心の堰は遂に決壊した。  大声をあげて。シズナは泣く。  イリオスは自滅した。アティアは裏切りの果てに討たれた。父と思っていた人は父ではなく、今日初めて出会った他人が父と名乗ったそばから死んだ。  誰もが嘘を吐き、誰もが本音を言って、去っていった。  もう、誰を、何を信じれば良いのかわからなくなって、シズナは幼い子供のように声をあげて泣き続ける。  外の空気は冷たさを増す。  やがて、灰色の空から、白いものが舞い降り始める。  この山に降る、初雪であった。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加