第8章:仮面の下に秘められた

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第8章:仮面の下に秘められた

 人里離れた場所へ行って、買い物から離れていたので、資金が足りるのかとシズナは懸念したのだが、彼女の与り知らぬところで財布の紐はコキトが握っていたらしい。旅立ちの時に下賜された分と、セレスタ村で魔物を退治して村人からもらった謝礼、そして、「もう使う人はいないから」とミサクが堂々とエルヴェの家から失敬してきた金目の物を売り払って得たイージュで、懐は潤っていた。  買い物を終えた後は、ミサクの頼みで銃火器の店を訪れた。銃は、込める弾が無ければ無用の長物と化し、なおかつ定期的に、一旦全てを分解しての調整(メンテナンス)をしなくては、暴発する危険性があるという。ミサクの得物はアナスタシアでも最新式で、調整の頻度が低くてもまだ安全な代物らしいが、それでも、数ヶ月放っておいた銃に負荷がかかっているのは確かだ。顔に大きな傷のある店主に銃を託し、調整が終わるまでの時間を、食事をとってつぶす事に決めた。  美味しそうなにおいの漂ってくる食堂の看板が視界に入った途端、三人の腹が三者三様に鳴き声をあげる。ずっと保存食や現地調達で過ごしてきた身体は、出来立ての料理の誘惑には勝てなかった。
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