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第8章:仮面の下に秘められた
途端に、心臓が跳ねた。そう言われて、確実に心ときめいている自分がいる。それを意識しつつ、シズナは彼に導かれるままくるうりと一回転した。
「貴方は随分と伸びたわね」
「不可抗力さ」
彼が踊りながら器用に肩をすくめる。結った紫の髪が、馬の尻尾のように揺れる。少し茶目っ気を帯びた答えに、我知らず唇がほころんだ。
やはり彼は、彼のままだ。本来の性格を失っていないのだ。それを思い知ると、胸の奥がじんわりと熱を持った。
曲調が変転する。明るく、テンポの速い展開へと流れるように遷移してゆく。それに合わせて、周りの恋人達と同じように、二人は笑顔を交わして、踊る、踊る。
今だけは、勇者と魔王という、敵対する運命を忘れ、ただのシズナとアルダとして、再会を果たした愛し合う二人として、刹那の時を刻んだ。
やがて曲が終わり、人々の間から歓声があがる。高々と拍手をする者、口笛を吹く者、相手と熱い抱擁を交わす者。皆それぞれだ。
そんな熱気の中、彼がシズナの耳元に唇を寄せて、囁いた。
「ここでは話が出来ない。少し、離れよう」
今までのときめきとは別の意味で、心の臓が大きく脈打った。
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