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第8章:仮面の下に秘められた
今の彼と二人きりになるのは、まずいかも知れない。人目のつかない場所へ行った途端に、魔王の本性を現してシズナを始末しにかかってくるかも知れない。
それでも。
シズナは信じたかった。彼は彼のままだと。一年前のあの日より前の、『魔王アルゼスト』ではない、純朴で心優しい『アルダ』を残していると。
愛しい人を、疑ってその通り裏切られるくらいならば、自分の心に従い信じて裏切られる方が、遙かに傷つかない。そう決意してシズナが小さく頷くと、彼はこちらの手をしっかりと握って歩き出した。
「よっ、お二人さん、お熱いね!」
「この後も楽しめよ!」
何も知らない周りの人々がはやし立てる中、手を引かれるままに、心惹かれるままに、シズナは彼と共に踊りの輪を抜け出し、新たな曲が流れ始めた広場を離れて、煌めく星々を望む郊外の丘へと向かった。
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