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第8章:仮面の下に秘められた
「君が唯一王国に失望しているのなら、俺は魔王として、遠慮無くアナスタシアを滅ぼそう」
そこで一旦言葉を切り、「だけど」と、深刻な紫の視線が、シズナを射抜いた。
「君が少しでもこの世界に守る価値を感じているのなら、どうか勇者として、聖剣『フォルティス』で俺を殺して欲しい」
あまりにも、あまりにも唐突な依頼に、シズナは驚愕に目をみはって立ち尽くしてしまった。どういう事だ。魔王が勇者に、いや、誰よりも愛しいアルダが自分に、引導を渡す事を願うとは。
「……どうして?」
二度、三度唾を呑み込んだ後、ようよう出てきた言葉は、それだけだった。口も変な形に固まってしまう。
「俺は、知ってしまったから」
アルダは痛みを耐えているかのように目をつむり、苦しげに言を継ぐ。
「勇者と魔王の真実を。魔王の存在の真相を」
勇者と魔王の関係については、シズナもエルヴェから聞いた。唯一王国を存続させるための一部品、出来上がった道の上を歩くだけの、道化師と変わらぬ存在。だが、魔王の存在の真相とは、一体何だろうか。疑念を顔に表したシズナには答えないまま、アルダの言葉は続く。
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