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第8章:仮面の下に秘められた
緊迫した空気を破ったのは、ミサクだった。予備動作無しに引鉄を引く。間違い無く敵の急所を狙った一撃はしかし、アルダが身を引く事で避けられる。またも魔律晶無しに黒い光が収束し、刃と化してミサクに襲いかかった。彼も伊達に特務騎士隊長ではない。最低限の身のこなしだけで攻撃をかわし、三射、四射目を放つ。だが、アルダもそれは予測済みだったのだろう、既に発動させていた『障壁律』で受け止め、銃弾はぽろぽろと地面に落ちた。
「シズナを守って旅をしてくれた礼に、死を与えるのは無しか」
「生憎、シズナを裏切った罰に、相討ち覚悟でも貴様を討ちたいのさ」
銃口と、闇の魔法球が互いを射程距離に捉えたまま、睨み合いに陥る。だが、その緊張の糸を断ち切ったのは、シズナであった。アルダをかばうようにミサクの射線に割って入り、両腕を広げる。
「シズナ?」
珍しく、ミサクが驚きを顔に浮かべた。信じられない、とばかりに洩らす。
「世界の敵の味方をするのか?」
「違う」
アルダも背後で戸惑っている気配がする。男二人の困惑を、身に染みるように感じ取りながら、シズナはぶんぶんと頭を横に振った。
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