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第9章:青い魔剣『オディウム』
つまり、魔王の城へは、選ばれた者しか辿り着けないのだ。そして次代の勇者がそう簡単に次の魔王を倒す事が無きよう、各地を巡って経験を積み、勇者の名を高めて、ひいてはその後唯一王国の威信を高める為に、勇者とその仲間は抹殺されなければならなかった筋書きにも、説明がつく。
シズナがごくりと唾を飲み下すと、「シズナ」とミサクがこちらを向き、真摯な瞳で見つめてきた。
「貴女が決めてくれ。魔王城へ行くか、否か。『天空律』はきっと貴女の意志に沿ってくれる」
ひとつ、心臓が大きく跳ねる。アルダがこれを敢えてシズナに託した以上、『天空律』はシズナの意志を尊重するだろう。
アルダを討つにしろ、話し合うにしろ、会うつもりがあるのなら、『天空律』はシズナを魔王城へと導く。しかし、シズナの側にもうアルダと顔を合わせる気が無いのなら、『天空律』は無用の長物となり、勇者が魔王を倒さないアナスタシアは、滅びの道を辿るだろう。
だが、この時既にシズナの中では、ひとつの決意が固まっていた。一回、深呼吸をして、その信念を言の葉にして吐き出す。
「魔王城へ、行くわ」
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