第1章:血染めの祝福

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第1章:血染めの祝福

 太陽の光は、四季の差はあれど、変わらぬ輝きで地上を照らし続ける。  そんな陽光降り注ぐ秋空の下、黄金色の草原で、木剣の打ち合う高い音が響き渡った。  向かい合うは少年と少女。少年は夜を映し込んだような短い濃紫の髪に、やはり紫の瞳。まだまだ成長の余地を残しているのか、顔は幼さを残し背はやや低いが、過不足無く腕や足についた筋肉が、容貌だけで判断してはいけないという事を示している。  対する少女は、日の光の下に生まれてくるのを定められていたかのようにきらめく金髪を、うなじの所でひとつにくくり、春の海のごとき碧い瞳をしている。娘から女性へ変わりゆく過渡期特有の美しさを帯びた顔には真剣さを宿し、少年より線は細いものの、普通の娘とは明らかに違う逞しさを備えた腕で木剣を構えていた。  少女がしゅっとひとつ、呼気を吐いて大きな一歩を踏み込む。かん、と軽快な音を立てて、一撃は少年の掲げた得物に弾き返された。  少女は二、三歩後ろによろめいたが、歯を食いしばって踏みとどまると、その足で草を蹴って、再び少年の懐めがけて飛び込む。渾身の突きはしかし、少年が身をひねる事でかわされ、上段から反撃が降ってくる。だが、そこまでは想定の範囲だ。少女は身を沈め、右足を軸足にしたまま身体を半回転させる。
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