第1章:血染めの祝福

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第1章:血染めの祝福

 そしてその傍らには、灰色の狼のような姿をした、しかし狼にしては大きく、吐く息の獰猛さも違う生き物が寄り添い、反対側にはユホが変化した若い女が、我が物顔でしなだれかかっている。  名を呼ぼうとして、シズナは、アルダが握っている物に気がついた。右手には赤の剣。そして左手には、血の滴る何かをぶら下げている。そこから垂れた血が、自分の手に落ちたのだとシズナは理解し、それから、それが人の首であると理解した。  誰のものなのか、知るのが怖い。だが、知りたい気持ちは恐怖を上回った。咳き込みながらもその首をまじまじと見つめ、シズナはひゅっと息を呑んだ。  横様に傷の入った、開かれる事の無い目。シズナと同じはずの金髪は、赤に染まっている。 「と、さ……」  言葉は声になりきらなかった。視界がぐるりと回って、シズナは受け身も取れずにしたたかに地面に頭を打った。 「さあ、魔王様」  ぼやける視界と、ひどい耳鳴りの中、ユホのやたら妖艶な声がまとわりつく。 「この娘にもとどめを。それで勇者の血族は死に絶えます。貴方様の覇道を邪魔する者は、いなくなりましてよ」 「……必要無い」
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