第1章:血染めの祝福

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第1章:血染めの祝福

 彼はもっともな台詞を言い、「立てるか」とシズナを促す。まだ膝ががくがく震えていたが、少年の腕にすがって、何とか地を踏み締める事は出来た。  それから周囲を見渡し、シズナは絶句せざるを得なかった。  悪夢の痕だった。家々は燃え落ち、広場には累々と死体が転がっている。炎にまかれて死んだ者だけではない。明らかに、『魔物』に喰いちぎられたと思しき腕や足もそこら中にあって、吐き気がこみ上げ、シズナは崩れ落ちるように屈み込んで、胃の中の物を全て吐き出す羽目になった。 「女性には、この光景はきつすぎるだろう。出来るだけ見ない方が良い」  静かに背中を撫でてくれながら、少年が告げる。胃液すら出なくなって、目を潤ませ口元を拭いながらようよう身を起こすシズナに、手布を差し出しながら、少年が名乗った。 「僕はミサク。唯一王国アナスタシアの騎士団員だ」 「……唯一王国?」  初めて聞く言葉に眉をひそめると、ミサクと名乗った少年は、 「そうか、やはり何も聞いていないのか」  と視線を彷徨わせ、継ぐべき言葉を模索しているようだった。が、心が決まったのか、シズナに向き直る。
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