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第1章:血染めの祝福
だが、現実は御伽話の通りではなかった。むしろ逆だ。魔王と呼ばれたアルダの剣によって、勇者だったという父の首は、胴体と永遠に泣き別れた。
身体の震えが止まらない。歯の根が合わなくてがちがちと耳障りな音を立てる。
「……皆は」
ようよう出てきた言葉は、切なる願いを込めた問いかけだった。
「村の皆は。無事な人はいるの?」
その質問に、ミサクの青の瞳が曇る。
「僕の部下が村中を捜索したが……」
そうして彼は顔を伏せ、首を横に振る。それが答えだ。
シズナは限界まで目を見開く。震えは、恐れから、怒りのそれに代わる。
何故だ。
「どうして」
勇者の血族の存在を知っていたなら、何故。
「どうしてこうなる前に、助けにきてくれなかったの!?」
シズナの血を吐くような叫びは、虚しく灰色の空に吸い込まれる。彼女の嘆きを受け止めたかのように、静かに空が泣き出した。
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