第1章:血染めの祝福

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第1章:血染めの祝福

 必殺撃が空振って、驚きに目を見開いていた少年だったが、彼の方が一枚上手だった。振り下ろした勢いのまま一歩を踏み締めて、剣を構え直そうとした少女に肉薄する。瞠目する少女に少年は更に接近したかと思うと、唇を相手の唇にかすめさせた。  ぽろり、と。  唖然とした少女の手から木剣が零れ落ちるのを見届けた少年は、その口を三日月形に象ると、少女の喉元に木剣の先を突きつけた。 「俺の勝ちだね、シズナ」  誇らしげに笑う少年とは対照的に、シズナと呼ばれた少女は目を白黒させていたが、数瞬後には耳まで真っ赤になって、木剣を左手で退けると、右手を握って振り上げた。 「今のはずるいわ、アルダ!」  ぽかぽかと頭を殴られ、「いてて」と、少年――アルダは、武器を持つ手を下げて肩をすくめる。しかし、本気の力がこもっていない殴打で彼が怯む様子は無く、反省の色も見えない。 「だって、戦場で君を見初めた敵がいたら、こんな不意打ちを仕掛けてくる可能性だって、無きにしもあらずだろう?」 「そんな戦場があるか!」
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