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第2章:魔王の花嫁
だが、平和な時は長くは続かない。勇者が中年にさしかかって身体の衰えを感じ始めた頃に、先代の仇を討たんとばかりに新たな魔王が彼を殺し、親を奪われた勇者の娘が魔王を討ち……と、まるでいたちごっこのように、勇者と魔王の戦いは繰り返された。
「魔王がどこにいるのか、王国はいまだ解明できていない。この大陸のどこにも、魔族の巣窟と思しき場所を見いだせていないからだ」
腕と足を組み、眉間に皺を寄せながらミサクは語る。
「勇者エルストリオなら知っていただろうが、彼の口から真実が語られる事はもう無い。四人いた彼の仲間も、死んだか今はもう王都にいなくて、話を聞ける者は存在しない」
少年は目を伏せて、溜息と共に言葉を継いだ。
「だから、まさか新たな魔王が、勇者の血族と同じ村で暮らしているとは、思いもよらなかったんだ」
新たな魔王。それが誰だか最早わからないシズナではない。だが、何故王国は勇者の行方を把握していながら、魔王の一族の消息については一切知る事が出来なかったのか。王国は無能か。その言葉を唾と共に呑み込んで、代わりに質問として少年に投げかける。
「ならどうして、今回は魔物の襲撃がわかったの」
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