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第2章:魔王の花嫁
するとミサクは伏せていた目を開き、
「魔法」
と右の人差し指を立てた。
魔法。これもイーリエから聞いた御伽話だ。とんがり帽子をかぶった黒衣の魔女が杖を振るうと、凍えた家の暖炉に火が灯ってテーブルに温かい料理が並ぶ。荒れ野に花が咲く。貧しい少女はきらびやかなドレスをまとった美しい姫に変身する。どれもこれも、夢物語だ。だが。
「貴女が思っているような超常現象ではないな」
まるでシズナの思考を読んだかのように、ミサクが唇の端をわずかに持ち上げてみせた。笑ったのだ。無知を馬鹿にされた気がしてシズナがむっとした表情を向けると、少年は軽く肩をすくめ、「まあ、貴女が知らないのも無理は無い」と話を引き戻す。
「王国はただ魔王に攻められるばかりだった訳ではない。魔物を捕らえ、解剖研究をした結果、魔物の体内には、生物の力を強化する『核』がある事を見出した。その核を上手く用いれば、人間でも、火や氷を出したり、嵐を起こしたり、遠い地の様子を窺う事も出来る」
「その、遠い地の様子を窺う事で、村の出来事も見ていた?」
「ご名答。伊達に勇者の娘ではないか」今度はきちんと感心した様子で、ミサクが微笑する。
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