第2章:魔王の花嫁

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第2章:魔王の花嫁

 空気を裂く勢いで宙を舞い、馬車を追いかけてくる影が、みっつ。一見すれば少女のような顔をしているが、その腕は明らかに人間のそれとは違う、茶色の翼を持ち、腹から下の下半身も、鳥のような羽毛に覆われて、足は鋭い鉤爪を有している。そいつらが、気のせいかもしれないが、窓越しにシズナを見てにたりと笑った、ように思えた。 「鳥人間(ハルピュイア)か。集団で来られると厄介だが、まあ、あの数ならやれるだろう」  顔面蒼白で硬直してしまうシズナをよそに、ミサクが青い瞳を細めて淡々とひとりごちる。 「止まらず走れ、僕がやる!」  勢い良く窓を開いて御者にそう叫ぶが速いか、彼は腕を伸ばして馬車の屋根につかまり、椅子を蹴って馬車の外へと飛び出した。 「な……!」  何を、と声をかける暇も無く、少年の姿はシズナの視界から消え、頭上で軽い震動が響く。ミサクが馬車の屋根に乗った事は明らかだった。
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