第2章:魔王の花嫁

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第2章:魔王の花嫁

 明らかに二十代と思しき男達が、どう見ても十代後半より上に見えない少年に向かって敬語を使う。村人達には対等な口をきいていて、それをエルシにもイーリエにも特に咎められた事の無いシズナだったが、『外では年上には敬語で話しかけないと、拳が飛んでくるぞお』と、剣の師匠であるガンツに脅されていたので、今、目の前で真逆の現象が起きている事に、動揺を隠せなかった。  男達がレバーを回して門扉を開く。再度敬礼する彼らに見送られて、馬車は壁の中へと進んだ。  そこに繰り広げられた光景に、シズナはまたも絶句した。  一本の大通りが街を貫き、両脇に、故郷の村のような木を組んだ平屋ではなく、二階、三階建ての白壁の建物が並んでいる。何軒かの軒先には看板がぶら下がり、肉屋、八百屋、薬屋、茶屋、食堂、服屋、装飾品店、などの文字を見受ける事が出来た。  通りを行き交う人々は老若男女様々で、数も村の全人口より遙かに多いだろう。そんな道を、馬車は悠然と抜けてゆく。  その光景だけで唖然としていたシズナは、向かう先に見えてきた建物に、更に言葉を失う羽目になってしまった。
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