第2章:魔王の花嫁

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第2章:魔王の花嫁

 とてつもなく大きな白亜の建物だった。そびえ立つ尖塔の高さは、先程の壁を凌駕するのではないだろうか。 「一体、ここに住んでいるのはどれだけ大きな人なの?」  思わず零れ落ちた疑問を、ミサクは耳聡く拾い上げたらしい。しばらく目を点にしていたが、シズナの思考している事に気づいたのか、口元を手で隠して抑え気味の笑いを洩らした。 「大丈夫、王宮に住んでいらっしゃる国王陛下は、我々と同じ人間だ。規格外の大きさではない。王族に仕える人間はとても多いから、王宮も広く高く造られている。それだけだ」  勘違いをしていた事と、それを聴かれていた事。両方のせいで、シズナの頬はかあっと赤くなる。  二人がそんなやりとりを交わしている間に、馬車は王宮前で止まった。ミサクが扉を開いて先に降り、シズナに向けて手を差し伸べる。  数時間、馬車に揺られてすっかり固まっていた身体を叱咤して立ち上がり、少年の手を借りて馬車から降りる。そして改めて王宮の高さを間近に見上げて、シズナはぽかんと口を開けて立ち尽くしてしまったのだが。 「まずは身を清めて着替えると良い。国王陛下への謁見は、格好を整えてからだ」
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