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第2章:魔王の花嫁
ミサクに言われて、シズナははっと己の身を確かめる。花嫁衣装はぼろぼろになり、あちこちに血がにじんでいる。魔物に襲われた時の自分の血と、アルダが生み出した殺戮の血だ。それに丸一日、水浴びも湯浴みもしていない。更には煙と死と吐瀉物のにおいが混じり合って、悲惨な様相を呈していた。馬車に同乗していたミサクはよく文句を言わなかったものだ。
そのミサクはシズナを連れて、王宮内へと踏み込む。赤い絨毯が敷かれ、そこだけでシズナの家を凌駕しそうな広さのホールを抜け、階段を上がる。どこをどう通ったかわからない内に、ミサクはシズナをひとつの扉の前に導いた。
「今日からここが貴女の部屋だ。中で専任の侍女が待っているから、彼女に全て任せれば良い」
木製の扉が開かれる。その途端、花のような柔らかい香りが、ふわっと漂ってきた。
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