第2章:魔王の花嫁

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第2章:魔王の花嫁

 通された部屋は、シズナ一人の身には余り過ぎるのではないかというほどに広かった。机と寝床と箪笥ばかりが置かれた実家の自室とは異なり、レースをふんだんに使った、二人は一緒に眠れそうな天蓋付きのベッド、丸いサイドテーブル、ぴかぴかに磨かれた鏡台、硝子テーブルを囲むようにしつらえられた柔らかそうなソファ。窓は大きくとられ、カーテンも見た事の無い美しい水色の薄布である。 「あっ、ミサク様、お帰りなさいませ!」  そんな部屋の中で、ベッドメイキングをしていた女性がこちらを向き、ぱっと笑顔を輝かせると、深々とお辞儀をした。ツートンカラーのお仕着せは決して野暮ったくはなく、膝丈のスカートが、女性の動作にあわせてふんわりと揺れる。 「そちらが、シズナ様ですね?」  黒目がちな真ん丸の目が、きらきらと輝いてシズナを見つめてくる。彼女が専任の侍女とやらだろう。歳の頃はシズナより三、四歳ばかり上だろうか。小顔で、絶世の美女という訳ではないが、愛らしい面立ちをしている。 「時間が来たら迎えにくるので、後は頼む」 「かしこまりました!」
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