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第2章:魔王の花嫁
侍女が満面の笑顔で受け応えると、ミサクは軽くうなずいて、「では、また後程」とシズナに言い残して部屋から出て行った。侍女と二人きりになったシズナが、居所を失くしてしどもどしていると。
「シズナ様、わたしはアティアと申します。僭越ながら、シズナ様の身の回りのお世話を仰せつかったので、よろしくお願いいたしますね」
アティアと名乗った侍女は目を細めて微笑んで、深々と頭を下げる。背筋の伸びた、卑屈さなど一厘たりとも含まない、清々しいお辞儀だった。
「さあさあ、色々あってお疲れでしょう? 続きの部屋にお湯を用意してありますので、ゆっくり温まってくださいな」
アティアは波打つショートボブの茶色い髪を跳ねさせて、無邪気にシズナを奥の部屋へと導く。そこはタイル張りの床で、湯の満ちたぴかぴかのバスタブが置かれていた。アティアがいそいそとこちらの服を脱がせようとするので、シズナは焦る。
「だっ、大丈夫! 自分で脱げますから!」
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