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第2章:魔王の花嫁
するとアティアはきょとんと目をみはり、それから顔を伏せてくすくす笑い出してしまった。自分は何か変な事を言っただろうか。王都の常識などひとつもわからないシズナが、眉間に皺を寄せて首を傾げると、侍女は軽く咳払いをして、「申し訳ありません」と低頭した。
「わたし達メイドは、高貴な方々のお世話をするので、あらゆる事をお手伝いするのが職務でして。シズナ様の今までの暮らしと、わたしの常識が噛み合わない事があるのを、失念しておりました」
言葉尻だけとらえれば、田舎者と馬鹿にされていると受け取っても、相手も文句は言えない。しかしアティアの声音は、洩れ出た笑いとは裏腹に、心底からの謝罪が込められている。
この女性は頼りにしても良さそうだ。そう判断したシズナは、袖を脱ぎかけた腕を、アティアに向けて差し伸べた。
「貴女のお仕事を奪うような真似をして、ごめんなさい。お手伝いを頼めますか、アティアさん」
すると彼女は、今度は驚きに目を見開き、それから、ふっとくすぐったそうに笑んだ。
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