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第2章:魔王の花嫁
「さん、は要りませんよ、シズナ様。貴女は勇者のご息女、わたしは一介のメイド。わたしの事はどうか、アティア、と呼び捨てにしてください。敬語も無しで」
「でも」
「そうでないと、わたしが、『身分をわきまえろ』と国王陛下に叱られてしまいます」
人差し指を口の前に立てて、アティアは悪戯っぽく片目を瞑ってみせる。身分をわきまえろ、の意味がよくわからないが、外の世界では上下関係はよほど大事なものらしい。
「わかった。じゃあ、お願い、アティア」
シズナが口調を改めると、アティアも満足げに頷いて、「かしこまりました」と目を細めた。
汚れた服を脱ぎ捨て、湯船に浸かる。母が少しだけ持っていた、ラベンダーの香料に似たものが入っているのか、気持ちを落ち着かせる香りが辺りに漂う。
「一緒に髪も綺麗にしましょうね」
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