第2章:魔王の花嫁

1/1

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/238ページ

第2章:魔王の花嫁

 袖まくりをしたアティアが、透明な液体をシズナの頭につけて、ごしごしとこすり始める。たちまちシズナの金髪は、白い泡に包まれた。まるで石鹸のようだ。いや、石鹸より更に泡立ち良く、香りも良い。初めての体験にシズナが驚きを隠せない間に、アティアは慣れた手つきで泡を湯で流し、別の液体を、シズナの髪に染み込ませるように手櫛で馴染ませてゆく。すると、特に頓着した事の無い髪が、つやつやになってゆく。シズナはもう発する言葉を選ぶ事が出来なかった。  湯浴みが終わると、アティアが用意してくれた新しい服に袖を通す。村では貴重だった絹の真っ白なシャツに、梔子の花をあしらったカーキ色のスカート。そしてベージュのブーツ。全ては、シズナの体格を事前に知り尽くしていたのかとばかりにぴったりと身に沿った。  服を着終えたシズナを、アティアが鏡台の前に導く。そして慣れた手つきで、艶を帯びたシズナの髪をひとつにまとめて藍色のバレッタで留め、顔には白粉をはたいて唇に紅を引いた。化粧など生まれてこのかたした事が無かった顔が色気をそなえてゆくのを、鏡越しに唖然と見守る。 「ほら、元が素敵だから、とても綺麗になりました」
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加