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第2章:魔王の花嫁
アティアに丁寧なお辞儀で見送られ、再び部屋を訪れたミサクに連れられてまた城内を歩き、辿り着いたのは、これまた広い部屋だった。一直線に赤い絨毯が敷かれた先には階があり、その上に立派な椅子――「玉座」とミサクが耳打ちで教えてくれた――が二つ並び、左側に、シズナの父エルシより年上だろう白髪混じりの男性が、右側に、まなじりのつり上がった、男性よりやや年下と見える女性が座っていた。男性はシズナを見るなり、髭の豊かな口元をにやりと持ち上げ、対照的に女性は、嫌なものでも視界に入れるかのように目を細めて、怜悧な視線をシズナに向けた。
「ひざまずいて。頭を下げて」
再度ミサクに囁かれ、階の下で膝を折った彼に倣って屈み込み、横目で様子をうかがいながら低頭する。すると。
「よくぞ来た、新たなる勇者の娘シズナよ。儂がアナスタシア唯一王ヘルトムートだ」
やや嗄れた声が頭上から降ってきた。間違い無く、玉座に座った男性から発せられたものだろう。
「勇者エルストリオの事は誠に残念だった。だが、希望は失われた訳ではない。そなたという新たな星がおる。そなたの成長と活躍を、期待しておるぞ」
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