第2章:魔王の花嫁

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第2章:魔王の花嫁

 声は掠れているのに、朗々と、まるで物語を詠むかのように王の口上は続く。シズナが頭を下げたまま戸惑いを覚えて黙りこくっていると。 「シズナよ、どうした?」  王の声が少し固くなって耳に届く。こちらの返答を待っていたのか。だが、何と答えれば良いのか。言葉を探してシズナがますます沈黙を貫くと、「陛下」と、見かねたのか、ミサクが口を開いた。 「申し訳ございません。シズナは王都という開けた環境に出てきたばかりの、何も知らぬ娘です。そして、偉大なるヘルトムート陛下を前に、緊張している様子。ですが、必ずや陛下のご期待に沿う働きをしてくれる事でしょう」  すらすらと出てきた台詞に驚き、頭を下げたまま隣を見れば、ミサクは凛と顔を上げ、国王を見つめている。だが、ヘルトムート王はそれで満足したようだ。「そうか、そうか」と鷹揚にうなずく気配があった。 「時に、シズナ」 「は、はい」  ようやく舌が回るようになってきたので、王の呼びかけに何とか返事をする。しかし、続けられた言葉に、シズナはまたも閉口する羽目になった。 「山奥の村で暮らしていたのだ、そなたはまだ乙女よな?」
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