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第3章:好奇と敵意と親愛と
硬い木と薄い布団の感触が、肌に心地良い。慣れず埋もれそうな羽根布団よりも、故郷の自室を思い出してずっと良い。安堵感に包まれながら、シズナはゆるゆると朝の覚醒へと誘われた。
国王への謁見が終わった途端、シズナは用意されていた豪奢な部屋ではなく、狭く薄暗い、使用人が使うという部屋へと連れて行かれた。ベッドとテーブルと椅子、最低限の調度品しか無い一室で突っ立っていると、アティアが蒼白な表情をして駆け込んできて、
「ああ、シズナ様。陛下のお怒りを買うなんて」
と、シズナの肩にとりすがって深い溜息を洩らした。
彼女の説明によると、シズナが人妻であった事が、ヘルトムート王の癪に障ったらしい。あれだけ贅を尽くした部屋は、夜に国王の訪れがある為の用意だったらしく、王の興味を失ったシズナには必要無いと、あっさり取り上げられてしまったのだ。
そんな意味があったのか。背筋がぞっとすると同時に、さっさとあの老王の下心から逃れられてせいせいしたと、シズナは内心胸を撫で下ろしたのであった。
お姫様並の待遇でなくなったとはいえ、仮にもこの大陸で唯一人の勇者を、下女として扱う訳にもいかなかったらしい。アティアが世話係から外される事は無く、食事も、故郷の村では味わう事が出来ないような、鮮魚のカルパッチョやとうもろこしのポタージュ、牛のフィレ肉ワインソースがけにレアチーズケーキタルトなどを食す事が出来た。
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