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第3章:好奇と敵意と親愛と
そうして王都での最初の一日は終わり、新しい朝を迎えたのだが、何をどうするべきか。一人で寝間着から着替えて髪をまとめ、少々がたついた窓を開けて、ぼんやりと朝の涼しい風を身に受けていると、部屋の扉が叩かれ、シズナの応えを待ってから開き、「おはようございます、シズナ様」
アティアが背筋の伸びた挨拶をして、「まあ!」と目を丸くした。
「シズナ様ったら、わたしのお手伝い無しで、もう身支度を終えられてしまったのですね」
そういえば、彼女は自分の手伝いをするのが仕事だったか。つい村での癖で、また彼女の出番を奪ってしまったらしい。
「あ、ごめんなさい」
慌てて頭を下げると、「いいえ」とアティアはやんわりと微笑む。
「もう国王陛下の口出しはありませんでしょうから、シズナ様のお気に召すままに振る舞ってくださいな」
ただし、わたしとシズナ様との秘密ですよ、と、侍女は唇の前に指を立てて笑った。
テーブルに着き、アティアの配膳で、パンとスープと果物、そして南方で採れる、炒って砕いた豆から淹れる、珈琲という飲み物を摂る。
「おはよう」
そんな軽い朝食を終える頃、騎士服に身を包んだミサクが姿を現した。
「こんな部屋では充分に眠れなかっただろう。すまない」
何故彼が謝るのか。シズナはきょとんと目をしばたたき、それからふるふると首を横に振った。
「とんでもない。家の枕と変わらない感覚で、ぐっすりだったわ」
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