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第3章:好奇と敵意と親愛と
太陽が中天を過ぎる頃、王城の中庭に構えられたアナスタシア騎士団の訓練場には、多くの人間がつめかけていた。騎士だけでなく、下級の兵士や昼休みの召使いにメイド達。誰もが興味津々といった様子で、主役の登場を待っている。
そして、軽い革鎧をまとった金髪に碧眼の少女が現れた途端、彼らは一様にどよめいた。
「あれが勇者エルストリオの忘れ形見か」
「国王の毒牙にかからなかったんだとよ」
「という事は、あの若さで人妻か? ひゃっ」
「山奥は早熟ねえ」
勇者の娘、というよりは、ヘルトムート王の寵を受けなかった事の方が、彼らの好奇心をくすぐるらしい。下世話な会話が遠慮会釈無く飛び交っている。シズナはそのことごとくを聞き流しつつ、訓練場の真ん中へと進み出た。
「本来ならば、僕が相手をするのが筋だが」
向かい合ったミサクが右手を顔の前に掲げ、軽く振る。
「僕は事情があって剣を持てない。代わりに彼と手合わせをしてくれ」
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