第3章:好奇と敵意と親愛と

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第3章:好奇と敵意と親愛と

 その言葉に応じてシズナの前にやってきたのは、背が高く筋肉質な、赤毛の騎士だった。歳の頃は二十代後半だろうか。かなりがたいが良く、シズナは少し顔を上げて彼の色の薄い瞳を見る姿勢になってしまう。 「イリオスだ。よろしくな」  騎士は野太い声で挨拶し、握手を求めてくる。シズナも手を差し出して相手の手を握ると、不意に強い力で引っ張られ、イリオスのがっちりした腕の中に抱き締められる形になっていた。たちまち観衆からやんやの歓声があがる。 「油断しすぎだぜ、嬢ちゃん」ねっとりとした声が耳を撫でるのが、気持ち悪い。「嬢ちゃんみたいな可愛い女が戦場にいたら、変な気を起こす奴が出てきても不思議じゃねえぞ」  似たような事はアルダにも言われた。 『戦場で君を見初めた敵がいたら、こんな不意打ちを仕掛けてくる可能性だって、無きにしもあらずだろう?』  と口づけを落とされた。だが、相手は愛するアルダだったから許せたのだ。このイリオスという男の行為が、言葉が、その奥に垣間見える下心が、全てが気持ち悪い。
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