第3章:好奇と敵意と親愛と

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第3章:好奇と敵意と親愛と

 銃。火薬と弾丸で敵を撃ち抜く、使い方次第では剣より強力な武器だ。オーキド老が、『もう湿気た弾が一つこっきりしか無いから、こうして手入れをしても宝の持ち腐れだがなあ』と皺だらけの顔をくしゃりと歪めながら、ひとつひとつの部品を解体していたのを覚えている。  あの銃も、魔物の襲撃の炎の中に消えてしまったのだろうか。もう戻らない日々を思って軽く唇を噛んだ時。 「脇に寄って」  ミサクが鋭く囁きながら、シズナの腕を引いた。訳がわからず引かれるまま、よろめくように廊下の端に寄ると、続いて「頭を下げて。目を合わせてはいけない、僕らの立場の方が下だ」と言われたので、出来る限り頭を低めた。  シズナ達が向かおうとしていた方向から、絨毯を踏み締めて人の歩いてくる気配がする。それが通り過ぎるのを待って下を向いたままでいると、気配が自分の前で止まった気がした。  いや、気のせいではない。値踏みするような視線を感じる。一刻も早くそれが過ぎ去ってくれる事を願いつつぎゅっと目を瞑ると、突如、がつ、と何か硬い物で、相手に向けていた頭頂部を思い切り突かれ、視界に星が散った。
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