第3章:好奇と敵意と親愛と

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第3章:好奇と敵意と親愛と

 ぐらりと世界が回る。遅れてきた痛みに、シズナは顔をしかめながら膝をつき、目を合わせてはいけない、というミサクの忠告も忘れ、いきなり無体を働いた相手をぎんと睨みあげて、そして碧眼をみはった。  護衛の兵士を二人連れたその顔には、見覚えがある。ヘルトムート王に謁見した時に、隣でシズナをひたすらに見すえていた女性だ。 「あら」  女は手にしていた、銀製の短い錫杖――それでシズナの頭を突いたのだろう――で口元を隠して、化粧っ気の濃い目元を嘲りに細める。 「こんな所に邪魔な像があると思ったら、エルストリオの娘だったか」 「ヘステ妃殿下」  ミサクが、苦い物を呑み込んだような声色で、女の名を呼ぶ。妃殿下、という事は、彼女はヘルトムートの妻という事か。ヘステ妃は、ミサクの言外の非難もどこ吹く風、逆にミサクの頭も錫杖で叩きつけた。 「王妃の道の邪魔をするような躾しかしていないのかえ、ミサク?」 「……誠に申し訳ございません」 「剣も魔法もろくに使えぬお前に騎士の位を与えてやっている陛下の温情を、仇で返すような真似はするでないぞ。その気になれば、すげ替える首などいくらでもいるのだからな」
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