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第3章:好奇と敵意と親愛と
ただひたすらに低頭するミサクの頭や顔、肩や胸を、ヘステ妃はしつこいくらいに錫杖で突く。何故、ミサクがここまでの扱いを受けなくてはならないのか。シズナの胸に怒りがこみ上げ、
「やめてください!」
ミサクとヘステの間に割り込むと、失礼も無礼も知らぬまま、平手で王妃の錫杖を絨毯の上に叩き落としていた。
ヘステが冷や水を浴びせかけられたような憮然とした表情でシズナを見つめ、ミサクが吃驚を隠さない様子でこちらを向いている。
「ミサクは謝っているじゃないですか。どうして追い討ちをかけるような真似をするんですか」
「シズナ」
ミサクが制止をかけてきたが、シズナの苛立ちはそれで治まるものではない。
「私は山奥育ちだから、王都の事は何もわかりません。だけど、立場が上だからとか下だからとかで、暴力を働いて良い理由にはなりません」
それはシズナの中の常識だ。父エルシや母イーリエは、時にシズナを厳しく叱る事はあっても、それはシズナに非がある、きちんと怒られる理由の存在する場合のみであったし、手を挙げる事は決して無かった。
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