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第3章:好奇と敵意と親愛と
「私はコキト、この城で魔法研究の責任者を務めている。あんたの魔法指南を仰せつかったよ」
やはり口調からも、一人称からも、性別がわからない。ついでに言えば、眉毛が無く目元も完全に見えないので、年齢もうかがい知る事が出来ない。
「よ、よろしくお願いします」
狼狽えながらも握手に応えると、コキトはにいっと並びの悪い歯を見せて笑みを深くした。
「魔律晶の研究だけ出来ていれば構わなかった私が、素人の教育なんて面倒臭い役目を押し付けられたんだ。せいぜい頑張って覚えてくれよ」
たしかに、本来の仕事に加えて、魔法のまの字も知らない人間にものを教えるのは、相当な労力だろう。
「それは……すみません」
シズナが素直に詫びると、コキトは口をすぼめて、色眼鏡の下の目をきょとんとみはった――ようだった。その直後、ぷっと吹き出したかと思うと、「あっははは!」と笑いながら握手をほどき、そのつるりとした頭を撫でる。
「ちょっとからかったつもりだったのに、真正面から受け取るなんて、本当に一本気なお嬢さんだな」
そうしてコキトは、再び歯を見せて、シズナの腕をばしばし叩く。
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