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第3章:好奇と敵意と親愛と
「むしろ気に入ったよ。私に教えられる事は全て与えるから、何でも聞いてくれ」
どうやら自分は、コキトの機嫌を損ねずに済んだらしい。今日半日だけで、下卑たイリオスや理不尽なヘステに辟易していたシズナは、好意的な人間に出会えた事に安堵して、
「じゃあ、お願いします」
と素直に頭を下げる事が出来た。
「んじゃ、早速始めようか」
コキトは机の上に置いてあった、鉱石のごとき物体の一つを手にする。白みを帯びた半透明のそれは、ひとつの根からいくつもの芽が伸びたかのように、ごつごつとした造りをしていた。
「体感してもらった方が話が早い」
と、魔法士は口元をゆるめて、シズナの手に鉱石――その言を借りるならば魔律晶――を握らせる。
「これは『回復律』。使い方はいたって簡単。ぎゅっと握って『こいつの怪我を治したい』と念じるだけ」
ぶらぶらと手を振りながら、コキトは天気の話でもするかのように呑気に語る。
「丁度そこに怪我人がいるから、試してみようか」
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