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第1章:血染めの祝福
「やる事だけはやってるようだねえ」
アルダと手を繋いで集落に戻り、彼の家の前まで行った時、シズナ達を出迎えたのは、嫌味たっぷりのしわがれた声だった。咄嗟にどちらからともなく手を振りほどき、その手を背中に回して、後ろめたい気持ちで声の主の顔色をうかがう。
真っ白な髪に金の瞳ばかりがぎょろりとした、背の低いしわくちゃの老婆は、ちっとあからさまに舌打ちすると、腰に手を当て二人を睨む。いや、正確には、シズナ一人を、か。
「まったく、うちの大事な子の周りを悪い虫が飛び回って、鬱陶しいったらありゃしないさ」
本人を目の前にして、悪口を呑み込みもしない。アルダの祖母だというこのユホは、ある日突然、幼いアルダを連れて、身一つでこの村にやってきた。
過去を詮索しない、という紙に無き約束通り、村人達は、似ていない祖母と孫を受け入れ、使われていなかった小屋を改築して提供し、何くれと面倒を見たが、ユホが感謝の言葉を返す事は無く、皆と積極的に関わり合おうともしなかった。
このままでは子供の成長にも悪影響が出ると思ったのだろう、シズナの母イーリエが、
『アルダと遊んで来なさい』
と村でただ一人の幼子であるシズナをけしかけて、少女は小屋の隣の池のほとりでぼんやりと水面を見つめていた少年を、村の近くの原っぱへ引っ張り出した。結果、シズナとアルダは無二の遊び相手となり、友人となり、やがて恋人としての関係を成立させた。
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