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第3章:好奇と敵意と親愛と
そう願って『回復律』を握る手に力を込めると、りぃ……んと静かに鳴り響く音と共に、急に左手が温かさを帯びた気がして、シズナは薄目を開き、それから驚きにしっかりと目を見開いてしまった。
『回復律』が、静かに青い光を放っていた。光は流れるようにシズナの左腕からかざした右手へと伝い、ミサクの傷に降り注ぐ。
やがて光がおさまると、ミサクは数回瞬きしてこめかみに触れ、
「もう、痛くない」
と呟き、それから、シズナに向けて淡い笑みを見せた。
「流石だな、ありがとう」
一切おべっかなどではない素直な感謝の言葉に、シズナは気恥ずかしくなって顔をうつむける。
「おー、見事見事」
その後ろで、コキトが呑気に拍手をした。
「あれだけの説明で、本当に魔法を使っちゃうなんて、あんたは噂以上の逸材さね。そっちのダメダメ弟子とは偉い違いだ」
「悪かったな、不出来で。あと、君の弟子になった覚えは無い」
「私があれだけ手取り足取りじっくり教えてやったのに、『静音律』を大事な物に取りつけるしか成果が無かったじゃないか」
「シズナに誤解を与えるような言い方はよしてくれ」
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