第4章:奪われた光

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第4章:奪われた光

 朝、早く起きて朝食を摂り、午前中は大陸史や世間の常識、勇者に相応しい立ち居振る舞いを学ぶ。昼食後は騎士団の誰かと手合わせをして、コキトの魔法講座。夕食の後には風呂で一日の汚れを落として、布団に潜り込む。  最初の一ヶ月こそ、故郷の村が燃え滅びる夢にうなされて、夜中に何度も飛び起きた事はあったが、 『人は辛い思い出を薄める事で、精神の安定をはかるんだよ』  と手の内で魔律晶をもてあそびながらぼやいたコキトの言う通り、段々と悪夢に悩まされる頻度は減っていった。  山奥の村では使う事の無かった、アナスタシア通貨イージュを払って、街で買い物をする事も覚えた。 『勇者エルストリオの娘が城で勇者としての教育を受けている』という噂は城下にまで広まっていたが、人々はその姿形まで伝え聞いている訳ではないようだ。シズナが顔を隠さずに堂々と街を出歩いても、特に騒がれる事も、名を訊ねられる事も無く、単にお遣いにきた若い娘、として扱われた。
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