第4章:奪われた光

1/1
前へ
/238ページ
次へ

第4章:奪われた光

 それは、季節が移ろい寒さが本格的になったある日、訪れた。  朝食の時間に、ライ麦パンとかぼちゃのポタージュに手をつける気が起きず、デザートに盛られたオレンジだけを食した。 「どうされました、シズナ様?」  アティアが不思議そうに首を傾げる。 「お口に合いませんでしたでしょうか。お好きだと思っていたのですが」 「うん、嫌いになった訳ではないんだけど……」  どうしても、麦や野菜の匂いが鼻について食欲を減退させたのだ。 「作り方が変わったのかもしれませんね。後で厨房の者に訊いてみます」  そう言って、アティアは食事を下げたが、くらくらと視界が回るような気持ち悪さまで出てきて、その日の座学も訓練も身に入らない。 「体調が悪い時に魔律晶を使えば、思わぬ事故を引き起こしかねない。今日はここまでにしよう」  シズナの変調を察したコキトは、そう言って魔法講座を切り上げた。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加