第4章:奪われた光

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第4章:奪われた光

 寒気はしないので熱がある訳ではなさそうだが、身体がだるい。よろけながら自室へ戻り、アティアが夕食を用意してくれるのを、ぐったりと椅子にもたれかかりながら待っていたシズナだったが、目の前に鶏肉のローストが置かれた途端、脂の匂いに吐き気がこみ上げて、蹴るようにして椅子から立ち上がり、しかし目眩に襲われてその場にしゃがみ込んで、胃の中の物を吐き出す羽目になった。 「シズナ様!?」  アティアが驚きに目を見開いて駆け寄ってくる。大丈夫、と返そうとしたがかなわず、支えてくれる侍女の腕に身を預けたまま、シズナは意識を手放した。  ぱちん、と暖炉で火の爆ぜる音と、周りで何かを話し合う人々の声が耳に届いて、シズナはゆるゆると覚醒に導かれた。しばらく状況がわからずぼんやりとしていたが、ある瞬間に自分を取り戻す。  いつものベッドの上に横たわっていた。厚手の毛布がかかっているのは、身を冷やさないようにアティアが気遣ってくれたのか。  ベッドを取り囲むようにして、アティアとミサクが、見知らぬ女性と話し合っている。女性の身にまとう白衣から、彼女がアナスタシアで医療を司る職業の人間だと、シズナは理解した。
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