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第4章:奪われた光
ぽかん、と。
シズナは天井を見上げたまま口を開き、しばし侍女の言葉の意味を模索した。そうして、理解した瞬間、驚きに目をみはる。
「勇者様は身ごもっておいでです」
女医師が、義務的に淡々と告げる。
「丁度、不調に悩まされる時期を迎えられたのでしょう」
故郷にはシズナより年下の子供がいなかったが、人が子を成す段階については、大人になる為の知識として母イーリエから聞かされた。子を産むまでに、食べ物の匂いに過敏になったり、身体がだるくて仕方無い時期があるとも。
『私はこれこの通り、丈夫だけが取り柄だからねえ。お前を産む時もそんなに苦労はしなかったさ』
母はそう軽快に笑って、筋肉のついた腕をばしんと叩いてみせたものだ。
その話を聞いていた自分が、新しい命を授かったというのか。しかも、思い当たる相手はただ一人しかいない。
(アルダ)
目を閉じて、愛しい人の顔を思い出そうとする。しかし、十数年共に笑い合ったはずの、穏やかな少年の姿の記憶はすっかり薄まり、代わりに、惨劇の日の、酷く冷えた紫の瞳しか浮かんでこない。
(アルダ)
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