第4章:奪われた光

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第4章:奪われた光

 裁縫はイーリエから一通り習っている。自分の服を繕う事は、自給自足の故郷では当然の行為だった。だが、赤子など抱いた事の無いシズナには、一体どれくらいの大きさの服を縫えば良いのか、とんと見当がつかない。  そうぼやくと、アティアは、 「お任せください。心当たりがあります」  と、ヘルトムート王の側室が産んだ王子の乳母を連れてきてくれた。  唯一王には正妃のヘステの他に十数人の側室がおり、それ以外にも手を出して産ませた子供がいて、その数は百に届こうかというほどだそうだ。ヘステ妃が五十の齢に近づいても一人も子を生さなかった為、その百人近い王子王女は、それぞれの親の野心を背負い、次の唯一王の座を虎視眈々と狙って、水面下で静かな睨み合いを続けているとの事だった。  だが、シズナにはそんな政争などどうでも良い。乳母から産着の型をもらって布を断ち、赤ん坊の柔らかい肌を傷つけないよう、縫い目を表側にして服の形にしてゆく。  赤子が男か女か。産まれるまでどちらかはわからないので、 「どちらでも使える色を選ぶのが無難でございますよ」
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