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第4章:奪われた光
アルダと共に生きたかった。一緒に新しい命の名前を考えて、やってくる命を笑顔で祝福し、その腕に抱いて微笑み合いたかった。子供が歩き出し、喋り出し、成長してゆく様を、二人で見届けたかった。
だがそれはきっと、叶わない。他の誰でもない、シズナ自身がその道を断ち切る役目を背負っているのだから。
決して果たされる事の無い夢想を思えば、ぽたり、と雫が産着に零れ落ちる。針を針山に刺し、その手で目を覆っても、溢れる物は留まる事を知らなかった。
雨期が過ぎ、本格的な夏の季節が到来する。
その日、シズナはいよいよ大きくなった腹を抱えて、コキトによる魔法指南を受けていた。
「確かに、あんたが私の研究に協力してくれるのはありがたいが」
魔法士は眉毛の無い額に縦皺を寄せ、困ってみせたようだった。
「そろそろ大事な時期だろう。無理は良かないよ」
「無理なんかしていないわ」
コキトの気遣いをよそに、シズナは不敵に笑って、雪の結晶のような形をした『氷結律』の魔律晶を手にする。彼女は基本的な魔法は最早一通り使いこなし、コキトが考えた応用術にまで手を出し始めていた。
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