第4章:奪われた光

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第4章:奪われた光

 子供を、抱いてやらなくては。  その思いとは裏腹に、四肢は重たくて動かせず、まぶたは自然に閉じてゆく。我が子の泣き声を遠くに聴きながら、シズナの意識は深淵へと滑り落ちていった。 (あの子を、抱いてあげなくちゃ……)  その思いと共に、シズナはゆるゆると目覚めに導かれた。しばらくは記憶が混濁して、ここがどこか、何があったか、理解するのに時間がかかったが、ある瞬間に、パズルのピースがかちりとはまるように、全てを思い出して、覚醒する。  娘が生まれて。助産婦に何かを飲まされて、そのまま寝落ちてしまった。眠っている間に移動させられたらしく、産室ではなく、いつもの自分の部屋に戻っている。  娘は泣いていた。すぐにでも抱き締めて、我が子が生きている感触を確かめたかった。だが、こうべを巡らせても、どこにも子供がいない。慌てて上体を起こし、探るように娘の姿を求めていると、軋んだ音を立てて部屋の扉が開き、 「おやおや、やっと起きたのかえ?」
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