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第4章:奪われた光
跳ね起きるようにして王妃に飛びかかろうとしたシズナはしかし、護衛の兵士に阻まれ、ベッドの上に押し返された。それでも尚起き上がろうとあがくシズナの額を、ヘステの手にした錫杖が小突く。手加減の無い、脳に響く痛みに、シズナは顔をしかめてのけぞった。
「おお、汚らわしい。我が夫が拾ってやった恩も忘れて、あさましい娘よ」
本当に汚い物を見るような目つきで、ヘステが吐き捨てる。
「こんな親に育てられるより、魔王の娘に相応しい教育を受けた方が、子供の為じゃ」
まるで自分が誰よりも正しく親切であるかのように、お仕着せがましく、王妃は口元をおさえてくつくつと笑う。
涙は出なかった。憤怒が過ぎるあまりに、感情を垂れ流す事も忘れてしまったのだろう。ぎり、と歯を食いしばって、唸るようにシズナは絞り出す。
「……人でなし」
ヘステは嘲るような笑みを投げかけて、シズナを叩きのめした事に満足したか、ゆっくりと部屋を出てゆく。その背中に、シズナは精一杯の罵倒を叩きつけた。
「この国の連中は、人でなしばかりだ!!」
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