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第4章:奪われた光
あまりにも冷静な、しかし有無を言わせぬ語調に、アティアもミサクも息を呑む。これ以上の対話は無用と判断したか、ミサクが先に踵を返し、アティアも再度深々と低頭すると、二人は部屋を出ていった。
一人残されたシズナは、しばらくの間、感情の宿らない碧の瞳で、袖が通される事の無かった産着を見下ろしていた。だがやがて、引き結んだ唇から唸るような声が洩れ、次の瞬間、爆発するように彼女は泣き出した。
その温もりを、一度も肌で感じる事が出来なかった。
瞳の色を確かめる事が出来なかった。
名前をつける事さえ、許されなかった。
どこへ行ってしまったのか、取り戻す事の出来ない大きな光の喪失に、シズナは産着を顔に押し当てて、慟哭に暮れるのであった。
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