第5章:赤い聖剣『フォルティス』

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第5章:赤い聖剣『フォルティス』

 座学でも、教師が舌を巻く吸収力を見せ、最早城で教えるべき事は何も無い、と教官達が口を揃えると、それを聞いたヘルトムート王は、いよいよシズナを正式な勇者として魔王討伐に送り出す決断を下した。  今までの普段着とは違う、丈夫な布を使った旅装に身を固め、この一年で更に伸びた金髪を結い上げたシズナは、一年ぶりの唯一王との謁見に臨む。その隣に、いつものお仕着せではなくやはり旅装束に身を包んだアティアが並んで歩くので、不思議に思って小首を傾げると、彼女は照れ臭そうに頬を触りながら「僭越ながら」とはにかんだ。 「わたしも、シズナ様のお世話役として、旅に同行させていただく事になりました」  幼い頃から武術の基本を叩き込まれていたシズナと違い、城の侍女である彼女に、戦いが務まるのか。訝しげな表情はしっかりと出てしまったらしい。アティアは苦笑して言葉を続ける。 「王都の侍女は、お茶を注ぐのと同じくらい当然のように、短剣の手ほどきを受けます。それに、わたしもコキト様から魔律晶の扱い方を教わりました。簡単な補助と回復の魔法ならば使いこなせますので、シズナ様の足を引っ張るような真似はいたしません」
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