第5章:赤い聖剣『フォルティス』

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第5章:赤い聖剣『フォルティス』

 そこまで言うのなら、彼女は己の腕前にそれなりの自信を持っているのだろう。下手に知らない人間が同行者になるより余程心強い。安堵感を覚えながら、シズナはアティアと共に、謁見の間の入口に立った。  重たい音を立てて扉が開く。玉座にいるヘルトムートと、あれだけの仕打ちをしておいて何の罪悪感も無く平然とこちらを睥睨しているヘステを睨むように見つめ、謁見の間へ踏み込んで、シズナは、先客の姿に気づいた。  口を真一文字に引き結んで、神妙な顔でシズナを出迎えるミサク。にやにやとした笑いを崩さないイリオス。色眼鏡の下に表情を隠して、何を考えているのかわからないコキト。その三者も、旅に耐え得る服装に身を包んでいる。それを見て、シズナはすぐに意味を理解した。 「揃ったか」  その考えに確信を与えるように、ヘルトムート王が肘掛によりかかり頬杖をついた姿勢で、気怠そうに言い放つ。 「シズナ。その者達を連れて魔王討伐の旅に出よ。いずれもそなたの助けになるだろう」
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