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第5章:赤い聖剣『フォルティス』
この場で聖剣を鞘から抜き放って階を駆け昇り、ヘルトムート王とヘステ妃の首を落としたら、周りはどういう反応をするだろうか。驚きに言葉を失って立ち尽くすだろうか。いや、ミサクあたりは冷静に銃を抜いて、こちらの眉間を撃ち抜くくらいはするだろうか。
それとも、笑いながら加勢してくれるだろうか。
歪んだ考えに口元をゆるめれば、手の中の『フォルティス』が、ほんの少し震えて唸ったような気がした。
まるで、その想いを実行してみせろ、とばかりに。
「と言う訳で、勇者様の手助けをする事になったぜ」
五人揃って謁見の間を辞し、扉が閉まった所で、イリオスが歩を止め振り返り、にやりとねばつくような笑いを見せた。
「俺は、中途半端な侍女や、騎士のくせに剣も使えないお坊ちゃんとは違って、きちんと役に立つからな。あてにしろよ」
彼はアティアやミサクを一瞥して、それからシズナに向けて右手を差し出す。握手を求めているのはわかったが、初対面時の無作法を思い出し、シズナがむっとした表情でその手を見下ろしていると、
「まだ警戒してるのかよ。可愛くない女は嫌われるぜ」
と、騎士はにたりと歯を見せつつ手を引っ込める。
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